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長町武家屋敷跡界隈は、江戸時代、まさに武士が住んでいたお屋敷が立ち並んでいた場所。
今でも土塀が残っていて町を歩くだけでも、なんとなく当時の面影を感じることができますよ。
長町武家屋敷跡は、カフェや土産物店などあって観光客も大勢訪れる場所ではあるんですが、実は今でも普通にここに住んで生活してる人がいる一般住宅街でもあるんですよ。
そんな中、唯一、武家屋敷の邸内と庭園を公開しているのが、加賀藩士・野村伝兵衛信貞(のむらでんべえのぶさだ)の屋敷跡「武家屋敷跡 野村家」なのです。
長町を流れる大野庄用水沿いに歩くと「武家屋敷跡 加賀藩千二百石 野村家」と書かれたなんとも風情のある看板が現れます。
土塀の向こうが武家屋敷・野村家ですね。
ちょうど冬に来たので「こも掛け」と「雪吊り」が施されてます。
この辺りはかつては加賀藩の中級武士だけが住むことを許された界隈であります。
すぐ横を流れる大野庄用水。
土塀の向こうが野村家の庭園ですね。
ここ「野村家」の初代主は、天正11年(1583年)加賀藩祖・前田利家公が金沢城に入城する際に直臣として従った野村伝兵衛信貞(のむらでんべえのぶさだ)。
主君が乗った馬の周りを警護する御馬廻組(おうままわりぐみ)の組頭や、各奉行職を歴任し、なんと禄高は千二百石!
石高は畑・屋敷地などの生産高を米の量に換算したもので、一両で一石のコメが買えたらしい。
仮に1両を75,000円とすると、75,000×1,200=90,000,000円ということかな。
……9千万っ!
ほぼ1億やんけ……
あ、1両75,000円てのは、佐藤健一氏『和算で遊ぼう!―江戸時代の庶民の娯楽 』(かんき出版 、2005年 )のを参考にしました。
野村家はその後も11代に渡って、千二百石で前田家の御馬廻組頭、各奉行職などを歴任し、お屋敷も千坪を超える大邸宅だったらしい。
けど、明治に入りまして、武家制度の解体で庭園を一部残して屋敷は取り払われてしまった……。
屋敷の持ち主も転々として、敷地も分割されてしまったのだけど、昭和初期に、藩政期「北前船」の船主だった加賀大聖寺藩・久保彦兵衛が藩主を招いた豪邸の「謁見の間」「上段」を移築、そして現在に至る。
という歴史の流れが垣間見えるお屋敷なのです。
まぁ今でも十分素晴らしいお屋敷なのだけど、かつてはもっと凄かったんだぞ!くらいな知識でも充分楽しめます。
こちら側が正門かな?
まぁどっちから入ってもいいと思うけど、正門も見ておきたいよね。
こちらにも野村家の由緒書きがありました。
うん、立派なお屋敷館漂いまくりです。
小さな気にもちゃんとこも掛けしてありますねー。
灯籠かな?
すんごい藁でくるまれてて、なんかかわいい。
こんな妖怪いそうだな。
なんと野村家はミシュランで2つ星をとってます!
2009年に発行された日本国内の観光地を格付けしたガイドブック『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で2つ星評価を受けたらしい。
観光地のガイドブック的なものも出してたのか、ミシュラン…
あ、ちなみに金沢では他にも「兼六園」が3つ星、金沢21世紀美術館が2つ星、金沢城石川門が1つ星評価を受けたそうです。
さらにアメリカの庭園専門誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』で、2003年の日本庭園ランキングで3位!に選ばれてるそうな。
ちなみに「野村家」の邸内は撮影OKです。
入り口に看板がありました。
撮影は大丈夫だけど、土足・飲食禁止ですよ。
入り口でもらうパンフレットに邸内の見取り図がついてます。
こじんまりとして見えるけど、かなり見どころいっぱいですよ。
野村家に入るとすぐ目の前にある甲冑。
初代当主の野村伝兵衛信貞が「末森城の合戦」で着用していたと伝えられているらしい。
この「末森城の合戦」で一番槍の武功を挙げて、千石を賜ることになったらしい。
末森城の合戦が天正12年9月9日(1584年10月12日)なので、436年前か。
すごいな、保存状態も結構いい。
廊下を通り最初に入る控えの間からみた奥の間。
襖絵とか素敵。
欄間の彫刻も凝ってるねぇ。
奥の間の縁側からも庭園が見える。
池に錦鯉がいますね。
水の流れる音って落ち着きますねぇ。
謁見の間へ行く途中にある内庭。
庭の組石は金沢城の石垣として切り出された時に山に残っていたもの。
切り出し人夫の目印入りの戸室石らしい。
ちなみに当時は一般使用禁制の石なんだとか。
それが使えたってことかな。
そしてここが謁見の間!
奥の一段高くなってるとこは「上段の間」。
こちらにもまた見事な襖絵がありますね。
白い牡丹の襖絵は加賀大聖寺藩の藩士山口梅園によるもの。心流剣術の名手で、江戸時代後期の文人画家・浦上春琴に絵画を学んだという人物だそうです。
そして実際に藩主が招かれたという「上段の間」。
残念ながら「上段の間」には立ち入れないのですが、中を覗き見るとなんとも優美な空間ですね。
障子戸はギヤマン入り!
今見ると普通ですけど当時はかなり珍しくて贅沢なものだったんですよねぇ。
奥に庭園も見えるしね。
天井を見上げると、総桧づくりの格天井!
後ろ側から見た上段の間。
藩主目線はこんな感じなんですね。
上段の間から見える山水画の襖絵は加賀藩お抱え絵師・狩野派の佐々木泉景(せんけい)のもの。
上段の間には他にも高級木材の紫檀や黒檀も使われたり、床板には六尺もの桐板張りが施されたりと贅を尽くした拵えになってます。
さすが年収9千万…
あ、写真撮り忘れましたが、床の間には加賀藩13代藩主と14代藩主の書も飾られています。
上段の間向かって右手に奥の濡れ縁へと続く通路があるのですが、ここは「武者隠しの間」と言われてます。
細い通路で両側に襖があるのですが、
なるほど、襖を敷居に入れていざという時のために武者が隠れてたんですねー。
まるで忍者屋敷。
隠れるなら忍者かな。
庭側から見た「武者隠しの間」。
ここだけ板張りになってる。
「北前船」についての説明書きがありました。
上段の間の障子の奥、床の間の横になるかな、そこにはウグイスの鳴き声を楽しむための鳥籠がありました。
姿は見せないけど鳴き声が聞こえるという、風情を楽しむってやつですかね。
上段の間の奥にある濡れ縁。
なんとも美しい空間ですね。
尾張出身の野村伝兵衛は、故郷への思いから尾張の樹木を庭園に取り入れようとしたらしい。
ただ尾張に比べると加賀は寒いからね。なかなか根付かなかったらしい。
その中でもヤマモモは根付いたらしく樹齢400年を超えるそう。
ただ、どれが山桃なのか樹木にはあまり詳しくないのでわからなかった……
以前、女優の杏さんが出てた北陸新幹線のCMで映ってたのはたぶんここかな?
野村家の庭園には高低差がついていて、ちょっと小さいながらも滝があるんです。
大野庄用水から水を引き入れてるらしい。
上段の池から
滝を通って、
下の池につながってます。
上の池にも下の池にも鯉がいたけど回遊してるのかな?
濡れ縁の一番奥にあったつくばい。
この奥に2階の茶室へと続く通路があり、お抹茶をいただくこともできます。
蔵を改装した「鬼川文庫」もあり、そこでは野村家伝来の刀剣や前田家からの書状などさまざまな資料が展示されていてまだまだ見どころいっぱいなのです。
所在地 | 〒920-0865 石川県金沢市長町1-3-32 |
---|---|
入館料 | 大人550円、高校生400円、小中学生250円 |
営業時間 | 【4~9月】8:30~17:30【10~3月】8:30~16:30 (入館は閉館の30分前まで) |
定休日 | 12月26日・27日、1月1日・2日 |
駐車場 | あり |
アクセス | 香林坊バス停下車徒歩約5分 |
問合せ | 076-221-3553 |
URL | http://www.nomurake.com |
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