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春日大社の御本殿をグルリと囲む回廊を歩いていると、なんと回廊の中にすっぽりと収まっている神社がありました。
榎本神社というのですが、なんと春日大社が創建される前からあったらしいです。
榎本神社は春日大社の御本殿・南回廊の外側から参拝できます。
この榎本神社、創建年は不明なんですが春日大社が創建される前からここにあったらしい。
延長5年(927年)に編纂された『延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)』にはすでに榎本神社の記載があり、春日神を祀っていると記載されています。
また巨勢姫明神(こせひめみょうじん)という神様も祀っていたという記載もあるらしい。巨勢姫明神がどんな神様かは全くわからないんだけど。
まぁどちらも、もともとこの地を治めていた春日氏の氏神・土地神様かな。
これが江戸時代になると、現在の御祭神である「猿田彦命(さるたひこのみこと)」になってるんですけどね。
猿田彦命は、導きの神、道開きの神様です。
【伊勢詣で】猿田彦神社は物事を良い方向へと導いてくれる「みちひらきの神様」榎本神社と春日大社にはちょっと面白い「土地交換」のお話が残っています。
武甕槌命(鹿島明神)は春日野一帯に広大な神地を構えようと一計を案じ、地主である榎本の神に「この土地を地下三尺だけ譲ってほしい」と言った。
榎本の神は耳が遠かったために「地下」という言葉が聞き取れず、「三尺くらいなら」と承諾してしまった。
武甕槌命はすぐさま、榎本の神が所有する広大な土地に囲いをした。
榎本の神が「話が違う」と抗議した。
武甕槌命は
「私は地下三尺と言ったのに、あなたが聞き取れなかっただけでしょう。約束通り、境内の樹木は地下三尺より下へは延ばしません。あなたは住む所がなくては困るでしょうから、私の近くに住んで下さい」と言った。そこで、榎本の神は春日大社本殿のすぐそばに住むようになった。
三尺四方は、今でいうと大体1メートル四方くらい。
「地下」って言葉を聞き逃しちゃったんですね。
1メートル四方くらいならいい佳〜って思っちゃったんですね。
でも実際意図したところは、この山全部を三尺の深さまでっていう意味だったんですよね。
う〜ん、小ずるいな。
ちょっと軽く詐欺じゃない?(笑)
ただ、この地下三尺というところで面白いのが、実際に、この広大な土地の春日大社では、どんな大木でも地表から三尺までしか根が張らないらしい。
三尺から先は岩盤になってるから、そこから先は横に根が広がっているんだとか。
根が浅いから風に弱いので、立派な木でも台風で倒れることもあるらしい。
地下三尺までしか借りなかったからねぇ。
ちなみに、もう1つ別のお話もあります。
藤原京が都だった頃、武甕槌命は藤原京の東方の阿倍山に鎮座していた。
春日野一帯の土地を所有する榎本の神が阿倍山の武甕槌命のもとを訪ねて「私が住んでいる春日野と、あなたが住んでいる阿倍山を交換してほしい」と相談した。
武甕槌命はそれに応じたが、間もなく平城京への遷都が行われ、阿倍山に移った榎本の神のもとには参拝者が少なくなり、榎本の神は貧乏になってしまった。
困った榎本の神は武甕槌命に助けを求め、武甕槌命は自分の社(春日大社)のそばに社を建ててそこに住むように言った。これが今日の榎本神社であるという。
参拝者が少なくなると神様も寂しいんですね。
明治維新までは、春日大社へ参詣に訪れた人は、まず「榎本神社」に参拝してから「春日大社」へ参拝するという慣習があったらしい。
元々の土地神様にご挨拶ということでしょうかね。
榎本神社の参拝の仕方がちょっと面白い。
大きな音を立てて、柱を握りこぶしで叩くという風習もあったらしい、参拝するのです。
榎本神社の神様は耳が遠いからね。
「春日さん、お参りにきました」、榎本神社の周りを廻ってから春日大社の御本殿に参拝に向かうというのが習わしだったそうですよ。
つまり祓戸神社で穢れを払った後は、すぐに御本殿に向かうのではなく、「榎本神社」へ参拝するということですね。
御本殿への入り口の南門の並びにあるので行きやすいですしね。
昔からの習わしに倣って、榎本神社から参拝していきますか。
ちなみに、毎年3月に行われる「御田植神事(おたうえしんじ)」も榎本神社からスタートします。
ご遷宮の際にも、一番先に提灯をつけるのは榎本神社なんだそうです。
南門へと上がる階段の手前にある、階段を上った先に「榎本神社」があります。
本当に回廊の中にすっぽりと収まっています。
お社は完全に門に囲われてはいるのですが、格子の間から見えるお社はなかなか立派です。
直接陽にあたり色褪せることも少ないからか、彩色も美しいままです。
回廊の中にすっぽりとおさまっている神社。
なんともユニーク。
南門のすぐそばにあるにも関わらず、人通りも少なく静かに参拝できます。
ぜひ春日大社へ参拝の際は、榎本神社にも立ち寄ってみて。