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金沢城は「石垣の博物館」と呼ばれるくらい、さまざまな積み方の石垣を見ることができます。
石垣に注目してお城めぐりをするというのもまぁ、なかなかマニアックだとは思いますが、石垣の特徴だったり、時代による変遷などを頭に入れておくだけでもかなり楽しめます。
そして「石垣の博物館」なる異名を取る金沢城、その名に恥じぬ石垣の展示の充実っぷりがすごいです。
しいのき迎賓館の裏手にあるいもり堀。
そのいもり堀と金沢城の石垣の間に、石垣の積み方や、加工の仕方、さらには発掘された石垣が展示されているのです。
野外なので、いつでも無料で見ることができますよ。
加賀百万石を治めた加賀藩主前田家の居城・金沢城。
石垣の博物館とも呼ばれる金沢城には、いもり堀近くに石垣についての積み方や石材の加工などの技法が実物とともに展示されています。
いもり堀と金沢城の石垣の間に広大なスペースで展示されています。
野外展示なので、いつでも自由に見ることができるのですが、博物館並みの説明展示となっております。
ここだけでも十分「石垣の博物館」と言ってしまっていいと思うんですけどね。
ここである程度、石垣についての知識を入れてから、金沢城の石垣めぐりをするのも楽しいですよ。
薪の丸コースへの入り口の階段近くに石垣の展示があります。
ちなみにこのエリアは、桜も綺麗な散策スポットでもあります。
なんと言ってもかなり間近で桜の写真が撮れる穴場スポットでもありますよ。
石垣と桜のコラボレーション。
金沢城の主要な石積み技法には、
- 自然石積み
- 割石積み
- 粗加工石積み
- 切石積み
の4つの技法があります。
石積み模型の展示スペースには、
- 粗加工石積み
- 切石積み
の2種類が展示されています。
切石積み
綺麗に加工された石を積んだこの石垣は「切石積み」。
切石積みは、丁寧に開こうした切り石を隙間なく積む技法。
本丸への入り口など城の重要な部分の石垣に用いられてます。
金沢城内だと、
が切石積みの技法で作られています。
石垣は基本、正面の積まれた部分しか見ることはできませんが、ここ石垣展示では、横から後ろから、石垣の内部構造まで見ることができます。
表面の方はかなりぴっちりと隙間なく積まれてるけど、後ろの方、中の方かな、はそうでもないんですね。
粗加工石積み
こちらは粗加工石積みです。
粗加工石積みは、割石を加工して、形や大きさを揃えた石材、粗加工石を積んでいく技法。
櫓や長屋などの外周の石垣に用いられてます。
金沢城内では二の丸北面石垣が代表例。
加賀藩の石垣職人の後藤彦三郎は「城内屈指の石垣」と称賛してます。
金沢城といえば多くの人がまず思い浮かべるであろう石川門の石垣にも、粗加工石積みの技法が使われています。
兼六園から入って向かって左側が粗加工石積みです。正面は切石積みになっているという、石川門は、同じ場所で違う積み方が見れるという面白い場所でもあります。
【金沢城石垣巡り】金沢城のシンボル「石川門」は左右で積み方の違う石垣にも注目横から見た粗加工石積み。
切石積みに比べるとゴツゴツした印象ですね。
そしてかなり細かく、隙間に石が詰められてますね。
モルタルとかで固めるでもなく、石を積んで、隙間に石を詰めるだけで堅牢な壁になるんですよねぇ。
ちなみに金沢城内の鶴の丸休憩間の前にも、石垣の展示があります。
そちらには、
- 自然石積み
- 粗加工石積み
- 切石積み
の3種類の石垣が展示されています。
【金沢城めぐり】鶴の丸休憩間の前には石垣の基本の積み方がわかる展示模型がありますよ次なる展示は、石垣に使う石を石切場でどのように切り出して加工したか。
金沢城の石垣は戸室石が使われています。
採掘坑の周辺には、たくさんの石屑や加工途中の戸室石、中には完成品と見られる石材も残されてるそうです。
つまり、石切場では、石材の採掘だけじゃなくて、加工作業も行っていたということですね。
石垣の石材作りは、
- 掘る:原石を土中から掘り出す
- 割る:矢(クサビ)を打ち込んで石を割る
- 削る:ノミで石の表面を削り、平らに仕上げる
- 刻む:仕上がった石材の正面に刻印を入れる
- 運ぶ:石引道を通り、金沢城に運び、石を積む
という手順です。
まぁ文字にすれば単純ですが、これを手作業でやるわけですよね。
気が遠くなる作業だなぁ……
石切丁場での石づくり角石(すみいし)
石垣の出角には、切石状に加工した専用の角石が用いられました。
角石(隅石)は、石垣の出隅部分に使用される石のこと。
隅以外の普通の部分で使う石より大きめのものを使います。
左側は大型の原石から角石を作る途中段階で、右側は完成した角石。
どちらも石切丁場に残されていたものだそうです。
この巨大な石を加工して四角く整えるのか……すげーな。
ここの石積み模型で展示されている石材は、金沢城公園整備で使用するために平成11年(1999)にキゴ山から運び込まれた戸室石。
当時、金沢城の石切丁場は戸室山北部と考えられていましたが、加工途中や完成した石材が含まれていたことがきっかけとなって調査が進み、キゴ山を含む広い範囲に多数の石切丁場跡が残されていることがわかったそうです。
石垣の石材として一般的な築石(平石)も石切丁場で作られました。
築石(つきいし)は、石垣の本体を構成する石材で、隅以外の普通の部分に積まれた石垣のこと。
原石に長方形の穴を一列に掘って、矢(クサビ)を打ち込んで割る作業を繰り返して石材を作ります。
正面の形よりも全体の大きさを重視し、控え(奥行き)を多く取るのが特徴。
切石積石垣の石材、切石。
江戸前期の切石は、正面の大きさや形を優先して加工し、控え(奥行き)は比較的短いのが特徴。
石切丁場で形や寸法を整え、切石積み専用の石として製作されていたそう。
粗加工石は、割石にノミやツルなどの道具を用いて粗く加工・調整したもの。
切石よりも長大であり、高く積むことに適している。
ここに展示されている石材には、寛永8年(1631)の五十間長屋の石垣創建時に遡る刻印を刻んだものや、石を割りとった際の痕跡である矢穴があるものも。
切石
菱櫓、五十間長屋、橋爪門続櫓の切石。
切石と一口にいっても、それぞれ時代ごとに特徴があります。
左側にあるのが、菱櫓から五十間長屋の石垣。
菱櫓台石垣(寛文8年・1668修築)の切石は、表面の調整が丁寧で、細長い筋状の加工跡がある。
五十間長屋台石垣(宝暦13年・1763修築)の切石は、表面の調整が粗く、元来製作工程の一つであった面周囲の縁取りを装飾として残すのが特徴。
右端の橋爪門続櫓台石垣(文化5年・1808修築)の切石は、周囲の縁取りは前代から受け継いでいるが、表面は細かな凸凹が残る程度。隣の石材と接する部分(合場)が広く平滑に調整されるなど、全体的に入念に加工されています。
平成9年から11年にかけて、菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓台石垣の解体修築工事が行われました。
その際に再利用できなかった石材の内、典型的なものや特徴の明確なものが集められて、ここに展示されています。
菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓台石垣は、外側が粗加工石積み、内側が切石積みになっています。さらに寛永8年に創建された後、寛文8年、宝暦13年、文化5年と各時期に繰り返し修築されたので、ここだけでもいろんな様式の石垣が用いられているのです。
細工のある切石
色々な加工が施された切石の展示。
橋爪門続櫓で角石の隣に置かれた角脇石には、上部にくぼみがつけられています。別の板石材を組み合わせることで平坦な部分が広げられ、上に積む石を安定させるための工夫だそうです。
写真だとわかりにくいか。
薄い板状の切石は、修復用として火災で面が剥離した石の前面にはめ込まれていたもの。
鬘石(かづらいし)
鬘石は、厚みのある長方形の石材。
櫓や長屋といった建物を乗せる石垣の最上部に使用されたもの。菱櫓や五十間長屋の鬘石は、建物材を固定するためホゾ穴が刻まれています。
橋爪門続櫓台内部から出土した旧材
橋爪門続櫓台の内部には文化5年(1808)の改修以前の石垣材が多く埋め込まれていたそうです。
石垣の面に火災で溶けた鉛瓦がべったりと貼りついたものもあるのですが、部分的に剥がされた跡があります。面を新たに作り直し、再利用しようとしたんじゃないかと考えられてます。
まぁ石垣を切り出す作業を考えたら、再利用できるものは再利用したいですよね。
河北門下層遺構出土の石材
平成18年(2006)から20年(2008)に行われた、河北門跡の発掘調査で桝方路面の下層から出土した石材群。
大溝の中に金沢城初期(17世紀初め頃)の土器等と一緒に廃棄されていたそう。
石材加工の時期的な特徴がよくわかる石材です。
というこれだけの石垣に関する展示が、いもり堀沿いにズラ〜っと展示されております。
いやもうまじで「石垣の博物館」じゃないですか。
写真ではなかなか伝わりにくいとこもあるので、実際に見て触れて見てください。
楽しいですよ。
何より石垣にこれほどの情熱を燃やしてる人がいないとここまで石垣にフューチャーされないでしょう。
意外な、でも金沢城をより深く知れる穴場スポットですよ。
所在地 | 〒920-0937 石川県金沢市丸の内1 |
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開園時間 | [3月1日~10月15日]7:00~18:00 (退園時間) [10月16日~2月末日]8:00~17:00 (退園時間) |
休園日 | 無休 |
入園料 | 無料 |
ライトアップ | 毎週金曜日・土曜日、祝日の前日など(その他、観桜期や紅葉期など) 日没から午後9時まで 無料 |
駐車場 | なし |
アクセス | バス「兼六園下」下車徒歩約3分 |
問合せ | 076-234-3800 |
URL | http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kanazawajou/ |
- 2021年3月に訪問した際の内容です。営業形態、営業時間や定休日が表記と異なる場合がありますので、ご利用の際は必ず事前にご確認ください。
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